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なにもできなかった時間~「できない」の中にあった傾聴の原点~【代表理事 村尾リエ】

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現在、学ばせていただいている、明治大学・諸富祥彦先生(日本における傾聴・カウンセリング・人間性心理学の第一人者)のカウンセラートレーニングコースも、いよいよ2年目の終盤。
来年2月の修了を前に、6回目のカウンセリング実習に臨みました。
この日が、自分の“在り方”を見つめ直す大きなきっかけになるとは思ってもいませんでした。

固まってしまった、あの日の私

大勢の前でのカウンセリング。前の方々の素晴らしい実践を見て、プレッシャーは最高潮。
順番は昼休み明けの一番手。
「落ち着こう」と目を閉じても心臓はバクバク、Apple Watchが“心拍数異常”を知らせるほど。
ようやく始まったセッションで、私はカウンセラーとして進行しながらも、
クライアントの悩みの中に“自分自身”の影を見つけてしまいました。

カウンセラーとして、そして悩みを作ってしまったグループの一員、当事者として…
固まってしまい、頭が真っ白になり、言葉が出てこない。
「どうしよう…」という気持ちの中、それでも仲間の存在に支えられ、なんとか終えることができました。

「なにもできない自分」に落ち込んだ日々

終わったあと、私は深く落ち込みました。
“なにもできなかった”“固まってしまった”自分に、
「仕方なかったよね」「精一杯やったよ」
と声をかけるも、まだまだ落ち込みの日々が続く…

それでも、仲間や友人の声かけに救われながら、少しずつ立ち直っていきました。
「傾聴講師でも、人間だもの」。
焦りも、迷いも、心拍数の上昇も全部ふくめて、これが“私”なのだと。

諸富先生の言葉に救われて

その後、諸富先生の個人セッションで、このケースのスーパービジョン(自分が担当したカウンセリングのケースを経験豊富な専門家、スーパーバイザーから、指導や援助を受けること)を受けたいとお話ししました。
すると先生は笑顔でこう言ってくださったのです。

「あれが本当のカウンセリングだよ」
「真っ白になってからが勝負。真正面から向き合ったでしょ。そこで踏ん張れたのがよかった。よく頑張ったね」

そしてさらに、

「リエさんがひと皮むけた瞬間だった。そこにみんなが立ち会ったね」

まさかの言葉に、驚きと共に涙が込み上げました。
自分では“できなかった”と思っていたあの時間が、
実は“真正面から向き合った時間”だったのだと教えてくださったのです。

逃げずに真面から

私はカウンセラーである前に、一人の人間です。
うまくやることよりも、自分として誠実にそこにいることを大切にしたい。

小学校の子どもたちともそう
クライアントともそう
仲間ともそう
真正面から向き合う。
それが、私の“傾聴の原点”だとあらためて感じました。

こんな風に自分では落ち込んでどうしようもないことが、今でもあります。
そんな自分に向き合い、経験は全て学びだなぁと思いながら、傾聴の活動をしています。

あなたが真正面から向き合ったことはなんでしょう。
あなたがあなたでいられますように。

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